転職活動を始めるにあたり、殆どの方が大手求人サイトに登録するかと思います。そして、サイトに登録すると様々な転職エージェントからスカウトメールが送られてきます。その中から自分に合った転職エージェントの利用を検討するわけですが、よく転職者から、「転職エージェントって何社使えばいいの?」という質問をいただくことが多いため、ここでは、転職エージェントを何社使えばいいのか?という疑問に対して、お答えさせていただきます。
転職エージェントって掛け持ちしてもいいの?失礼ではないですか?
結論から申し上げますと、複数掛け持ちして大丈夫です。むしろ、上手な転職活動を行うために、複数掛け持ちしたほうがいいです。人材紹介会社で勤務したことがない方はわかりにくいかもしれませんが、各転職エージェントにおいて、特色があります。たとえば、IT業界の求人を沢山持っている人材会社だったり、医療業界の求人を沢山持っている人材会社だったり。こうした人材会社は、いわゆる業界特化型の人材会社と言われている会社です。こうした人材会社であれば、その業界についての知識は豊富で、その業界における様々なポジションの求人を多く保有しています。転職先の業界が決まっているのであれば、こうした会社に依頼するのもいいでしょう。
とはいえ、若い人であれば、これまでの経験を活かし、違う業界で自分の可能性を模索したいという方もいると思います。こうした人には、職種特化型の人材会社がおススメです。職種特化型の人材会社であれば、その職種における様々な業界の求人を保有しています。技術系の求人を沢山持っていたり、営業系の求人を沢山持っていたり。特に若い方に言えることですが、これまで従事してきた業界の仕事については理解しているものの、当たり前ですが他業界となると知識がありません。このような人でも、様々な業界の中から、その人に合った会社を紹介してくれるため、自分の選択肢や可能性が広がることがあります。
こうした業界特化型エージェントや職種特化型エージェントは、会社規模で言いますと、中小エージェントであることがほとんどです。経営資源が限られている中小エージェントが生き抜いていくためにも、すべての領域でバリューを発揮するのではなく、それぞれの会社が得意としている分野でバリューを発揮しているというのが実情です。
その他、大手エージェントのような総合型人材会社であれば、多岐に渡る業界および職種の求人を多く保有しているため、多くの求人を紹介してくれます。「それなら。大手エージェントにお願いしたほうがいいですよね」という声が聞こえてきそうですが、一概になんとも言えません。大手エージェントは、経営資源が豊富で、保有する求人数も圧倒的に多いです。ただ、大手エージェントは効率性を求めた分業体制で転職支援を行っているため、情報の質やマッチング精度という観点では、明らかに中小エージェントよりも劣ります。
大手エージェントを活用したことがある方ならわかると思いますが、面談で希望条件などをキャリアアドバイザーに伝えた後、30社~50社程の求人を紹介されたりします。このカラクリとしては、大手エージェントの保有するデータベースに条件を入力し、ヒットした求人をただ送っているというだけにすぎません。業界内の用語で「機械マッチング」なんて言われているくらいです。いくら多くの求人を紹介してもらっても、その求人企業が求めているレベルが、その人に合っているかは一概になんとも言えません。
また、求人を紹介してくれたキャリアアドバイザーの大半は、その求人企業に訪問したことがありません。試しに「その求人を詳しく説明してください。」と聞いてみてください。求人票に記載されているような情報は説明してくれるものの、それ以上の情報は説明することができないのが殆どです。
一方で中小エージェントの場合ですと、求人企業と求職者を一人のコンサルタントが担当する一気通貫型を採用しているため、求人票には記載されていない裏の情報まで提供してくれるケースがあります。もちろん、中小エージェントが全てこのように情報を持っているとは限りませんが、力のある転職エージェントは間違いなく、こうした貴重な情報を保有しています。このように、各転職エージェントによって特色が違うため、複数社掛け持ちしながら転職活動を行うほうが、上手な転職活動のやり方と言えるでしょう。
それでは何社くらい利用すればいいのですか?
極論を申し上げますと、大手エージェントと中小エージェントの2社で良いと私は思います。また、先ほども申し上げた通り、各転職エージェントで特色が異なるため、できる限り、特色の違う転職エージェントを利用するのがベストです。ただ、コンサルタントとの相性という観点から、個人的には大手エージェントを1~2社、中小エージェントを1~2社ほど。計3~4社くらいが良いかと思います。
このコンサルタントとの相性というは、実は非常に大事です。コンサルタントの中には新人コンサルタントからベテランコンサルタントまで存在します。自分の人生に大きな影響を与える転職活動を誰に依頼したいと思うでしょうか。普通に考えれば、ベテランコンサルタントに依頼したい思うのは当然だと思います。こうしたコンサルタントは、求人企業や仕事に関する知見が豊富なだけでなく、保有する求人企業とのコネクションが強かったり、提供してもらえる情報の質という観点では、間違いなく新人コンサルタントと比べ、明らかに違いがあります。
ただ経験が長ければ良いというわけではありません。経験が豊富なだけで、説教じみたアドバイスをしてきたり、対応スピードが遅いコンサルタントも残念ながら存在します。また、経験が短くても対応スピードが速かったり、自分のために真剣に動いてくれる「できる若手コンサルタント」は存在しますので、結局のところ、実際に会って話してみないと何とも言えません。
話を戻しますと、こうした背景もあり、転職エージェント3~4社ほど利用するのが良いと思います。
転職エージェントを10社、20社利用したほうがいいのでは?
結論から申し上げますと、それはおススメできません。でも、たくさんの転職エージェントの中から自分に合ったエージェントを見つけたいとお考えの人には、「初回の面談までならOK」とだけお伝えしておきます。転職エージェントに登録すると、多かれ少なかれメールや電話でアプローチが来るはずです。離職中の方であれば対応ができるかもしれませんが、現職中の方ですと手に負えなくなってしまうことがあります。
別にメールの返信や電話対応をしなくても、何かペナルティというのはありませんが、転職エージェントも複数の転職希望者を担当していることもあり、レスポンスが遅い人は優先度が下がってしまいます。これは人材業界だけに言えることではなく、どこの業界でも同じことが言えると思います。人材会社もボランティア活動をしているのではなく、限られた時間の中で、成果(転職決定)を求められているため、より真剣に転職活動を行う人に注力するのは当たり前の話です。本気で自分の転職活動を支援してもらいたいと思うのであれば、あなたもそれに応える必要があります。自分が管理できるだけの社数に抑え、まずはお付き合いしようと思ったパートナーと向き合うほうがいいと思います。その中で、「ちょっと違うな」と思うのであれば、パートナーを入れ替えたりするのも良いかと思います。