まず係長に昇進して、課長代理、課長、部長代理…「管理職として出世する」というイメージ通りのステップを通ることだけが、「キャリア形成」ではありません。20代~30代で転職を希望される方が気になる「マネジメント経験がないと転職に不利?」というポイントや、マネジメント以外のキャリア形成のルートについてご紹介します!
「マネジメントを目指す」というキャリア形成が重視されなくなってきた理由
「会社員になったからには、順調に管理職に出世して給与アップを目指したい!」
実は、そのように考える会社員は「少数派」であることをご存知ですか?
農林漁業、公務員を除く全国の「従業員100人以上の企業」12,000社で働く正社員96,000人に、管理職への昇進の希望を聞いた調査データによると、なんと6割以上の方が「管理職に昇進したいと思わない」と回答を寄せています。
管理職以上(役員含む)に昇進したい…38.9%
管理職に昇進したいと思わない…61.1%
従業員100人以上と、決して「管理職がもともと存在しないような中小零細企業」へのアンケートではないにもかかわらず、大きな差となっています。
※引用:厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析 第三章」で取り上げられている独立行政法人労働政策研究・研修機構「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査2018年(正社員調査票)」集計より
昇進したくないと思う理由はさまざまです。
「責任が重くなる」…71.3%
「やるべき仕事が増え、長時間労働になる」…65.8%
「現在の職務内容で働き続けたい」…57.7%
「部下を管理・指導できる自信がない」…57.7.8%
「賃金が上がるが、職責に見合った金額が支払われない」…34.1%
「仕事と育児の両立が困難になる」…29.6%
「自分の雇用区分では昇進可能性がない」…24.4%
「周りに同性の管理職がいない」…18.2%
「仕事と介護の両立が困難になる」…12.4%
「定年が近い」…11.6%
「一つの会社に入って定年までをその会社で働く」「結婚して配偶者が専業主婦として働く夫を支える」という価値観が一般的だった高度経済成長期からバブル崩壊前後までの間は、「新卒で入社した会社のなかで出世する」以外の価値観の多様性はほとんどありませんでした。
その価値観がなくなりつつある今、「管理職になりたい」という価値観よりも、「ワークライフバランスを整えたい」「自分の専門性を高めたい」「仕事に自由度を求めたい」といった管理職では追求しにくい価値を求めて仕事を決定する人が増えています。
一方、雇用する会社側も、「経験年数だけで、年功序列的に給与が上がる」よりも、「同一賃金同一労働」の流れに舵を切り始めています。
ただし、「多種多様な価値観で働く社員たち」をマネジメントする、というミッションは、むしろその重要性を増しているのです。
「年功序列的な管理職への昇進」から、「プロフェッショナルとしてのマネジメント職」が求められていく時代と言えるでしょう。
「マネジメント経験がないと転職に不利なの?」という疑問
「マネジメント経験はありますか?」
20代~30代の若手転職者の方にも当たり前のように聞かれるこちらの質問ですが、必ずしも「係長」「マネージャー」といった「肩書」について確認しているわけではありません。
「マネジメント経験」とは、チームで、複数のメンバーや部下の「管理」を行った経験を指します。つまり、必ずしも役職者として部下の査定評価をするところまでが必須というわけではないのです。
マネージャーとしての資質は、チームビルディングやリーダーシップで確認します。転職後、将来的にマネージャーとしてキャリアアップしてもらいたい、と考える企業であれば、その素質がある方をより高く評価したいと考えます。
肩書の有無にこだわらず、
・新入社員のチームメンターとして活動した
・アルバイトやパートスタッフへの指導と管理を任されていた
・役職はないが、課長の補佐的な立場としてチームの売上管理を担った
これらの経験があれば、ぜひ回答できるよう準備しておきましょう!
マネジメント以外のキャリア形成のルートとは?
「管理職以外で、どんなキャリア形成の仕方があるのだろう…?」とお考えの方に、マネジメント以外のキャリア形成の代表的なルートをご紹介します。
それぞれのルートが確立されている会社もあれば、個人ごとにまったく流動的な会社もあります。
転職活動の際はキャリア形成のルートや可能性について、「自分はこのようなキャリア形成、キャリアステップを希望する」というルートがあれば、その事例について確認することをおすすめします。
プロフェッショナル・専門職としてのキャリア
ITエンジニアや技術系職種、コンサルタント、または営業専門職など、何らかの専門職としてキャリアを重ねるケースです。
「給与アップや会社内での地位向上を狙うなら、管理職になるしかない」という会社だけでなく、専門職として高度な知識や技術、経験があれば、相応の報酬を得ることができる賃金体系の会社も増えつつあります。
働く側も「報告書の作成や部下の育成、会議出席など管理職として求められる業務に興味関心が一切湧かない。研究開発の仕事に集中できる環境のためには、報酬がダウンしても構わない」とこれまでの専門的な業務を深く追求していくことにやりがいを求めやすいのが特徴です。
経営に関わるキャリア
逆に、「管理職」を飛び越えて経営に関わるキャリアを志向するというパターンです。
例えば自ら起業する、というケースだけでなく、「スタートアップ」と呼ばれる立ち上げ間もない会社に参画し、早期に経営陣へのステップアップを目指すというケースを20代~30代の若手のうちに経験する方も少なくありません。
執行役員制を取り入れる企業も増えており、「専門的な分野でキャリアを積みつつ経営の責任者としてさまざまな会社運営を経験する」というキャリアステップも可能です。
スタッフ職としてのキャリア
特に女性に希望者が多いのが、スタッフ職としてのキャリアです。今でも「一般職・総合職」といった区分で新卒採用をする会社は多数ありますが、一般職は基本的に「転勤・役職なし」を前提に採用されることが多く、異動も少ないため同じ分野の仕事に長く携わることが多くなります。
また、育児休業を経て復帰後スタッフ職に一時的に移ってワークライフバランスを整えた働き方をするというパターンもあります。最近は親の介護のために、40代~50代でスタッフ職に異動を希望される方も増えています。
長く培った経験やノウハウをできるだけ長期間活かしてもらうために働き方について柔軟に対応しようと考えている会社なら、全体としても働きやすさを感じることができるでしょう。
キャリア形成のルートは柔軟に考えよう!
キャリア形成の「きっかけ」は自分の意思だけで決まるものではありません。
「プランドハプンスタンス」というキャリア理論があります。(ジョン.D.クランボルツ教授/スタンフォード大学)これは、「キャリアは、予期していなかった偶然の出来事に対して最大限の力で対応する経験を積み重ねて形成される」というものです。
あらかじめ自分で「計画通り」積み重ねられる経験だけがキャリアを形成するわけではありません。
マネジメントにまったく興味がない方も、「マネジメントにつながるすべてのルートをあらかじめ排除する」という方法よりも、マネジメントを求められる可能性の有無は関係なく、自分の能力やスキルをどう生かすか?という点を重視して仕事に取り組んでいくことが大切です!