面接のときに内定と言われたので、すっかり安心して転職活動も辞め、他の企業の内定も断り、退職手続きも行っていた最中の不合格通知。「え?内定って言われたのに…そんなことってあるの?」という状態に混乱してしまっていませんか?
そんな困った状態を迎えてしまった人のために、「そもそも口頭の内定に法的な拘束力があるのか」「不合格と言われたらどう対処すればいい?」など、気になる疑問にお答えしていきます。泣き寝入りするのではなく、きちんとした対応ができるようぜひ参考にしてみてください。
■そもそも内定の取り消しは可能なのか
内定通知を書面で行った後だとしても、内定の取り消し自体は条件付きで可能です。書面による通知をし、候補者が承諾をした場合は、労働契約が結ばれているということになるため、内定の取り消しは法的には「解雇」という取り扱い。この状況でも内定取り消しが可能な場合というのは、下記4つのような理由に限られています。
1.内定者が経歴詐称をしていた場合
2.内定者が犯罪を犯した場合
3.企業側に予測できないような経営悪化が起きた場合
4.病気や事故などで内定者が勤務ができない状態になった場合
つまり、よっぽどのことがない限り内定取り消しはされないものというのが、一般的な認識です。ただし、これは「内定通知・承諾があって労働契約が結ばれていると判断される場合」に適用となる考え方です。
口頭の場合は「労働契約が結ばれた」と証明するのが難しいため、次の章でご紹介する内容を参考にして、今の状態が労働契約が結ばれていると認められるのか、専門家に相談しながら判断してみてください。
■口頭で内定と言われた後に不採用を告げられた場合は?
上記で説明した通り、内定通知があって承諾をした場合は労働契約が結ばれたと認識されるため、内定取り消しの条件を満たしていない限り、内定取り消しは無効となります。(労働契約法16条)
そもそも労働契約は、「働きます」という労働者側の意思があり、それに対して使用者(企業)が「その分の給与を支払います」という意思がある、つまり双方の合意があって初めて労働契約となります。
しかし、今回の状況でポイントとなるのは、「口頭で内定の通知を受けたため、内定の証明ができない」こと。そして、「労働条件が具体的に決まっていたかどうか」「労働者側の承諾意思が企業に伝わっているかどうか」という点です。双方の合意があったとする証拠がないと、内定通知を受けたと主張しても、労働契約が成立していないと判断される可能性もあるのです。
中途採用の場合は新卒とは異なり、内定承諾書などを交わすことがありません。書面がないため、基本的に内定を通知された後は、雇用契約書を交わして労働契約が結ばれたと認識するのが一般的です。
今回の場合、「口頭での内定後、お見送り(不合格通知があった)」という状態。つまり、「そもそも内定自体を出していない」と企業側が捉えているということです。どういう認識でそうなってしまったのかを、企業側に確認する必要があるでしょう。
また、口頭の場合は証拠となる物証を提出できないケースがあるので、メールや「最終面接で◯月には入社してほしいと言われた」など、発言を裏付けるような証拠や状況証拠が必要になります。
■急に内定取り消しとなった場合の対処法
急に内定が取り消しとなった場合、どのように対処すればいいのか、4つのステップでご紹介していきます。
1.過去のやりとりを確認する
まずは、過去のやりとりを確認するところから始めましょう。口頭による内定でもその企業の人事権者から伝えられた場合、労働契約の内容が折り合っていて、双方の合意があったら労働契約とみなされる場合もあります。そのため、状況証拠となるような過去のやりとりがないか、まずは確認してみましょう。
「面接の際の条件確認で、求人内容に相違ないと確認が取れた上で内定通知をもらった」
「◯月から勤務開始してほしいと言われた」
「メールで内定のお礼をしたものに対して返信があった」
「就業規則を交付された」
「健康診断を受けるように言われた」
上記のような一般的に内定を通知した後のようなアクションを企業側が行っている場合は、証拠として提出できる可能性が高いです。上記のような内定通知の証拠となりそうなメールなどを細かく確認し、時系列を整理しておきましょう。
まとめたらできれば専門家に確認してもらい、証拠となるかどうかの判断をもらっておくと、交渉の際に役立つでしょう。
2.内定取り消し理由に当てはまらないことを確認する
内定取り消しが可能な理由を先程ご紹介しましたが、下記のような状態に当てはまっていないかを念のため確認しましょう。
1.内定者が経歴詐称をしていた場合
2.内定者が犯罪を犯した場合
3.企業側に予測できないような経営悪化が起きた場合
4.病気や事故などで内定者が勤務ができない状態になった場合
上記を確認後、当てはまっていればその理由での内定取り消しなのか、それとも違うのか。当てはまっていなければ、どういった理由での内定取り消しなのか、次のステップに進んで確認してみましょう。
3.内定取り消し理由を確認する
1と2を確認した後に、内定を伝えた後、内定を取り消ししてきた理由についてヒアリングしましょう。状況から考えておそらく内定を出したという認識なく不合格通知をしたと思っている可能性が高いため、内定の通知をもらったということを伝えた上で、なぜ取り消しになったのかを確認するようにしてください。
内定取り消し理由を聞いたときに、「そもそも労働条件が結ばれていない」「内定と伝えていない」などを言われた場合、交渉は難航することが予測されますが、先方の主張を確認し、その後のステップに進みましょう。
4.証拠を提示し、相手の出方を見る
相手の主張を確認したところで、改めて専門家に相談しにいきましょう。メールや状況証拠を提示し、相手がどういった反応を返してくるかを確認してみてください。内定取り消し理由を確認したときの主張を覆せるような内容であれば、相手が対応を変えてくる可能性もあります。
あまり入社前にもめたくはないでしょうが、明らかに不当な場合は伝えることで内定取り消しが無効となる場合もあります。退職も確定し、他の企業も断ったなどの状況であれば、しっかり主張をしておく方がいいでしょう。
もしくはこのような対応をする企業には入社したくないということであれば、内定取り消し理由までを確認し、また新たに転職活動を始めるのが1番です。仮に裁判を起こして、一定期間の給与相当額や慰謝料の支払いを勝ち取れたとしても、裁判にかかる費用や時間で大幅にあなたの時間をロスすることになってしまいます。
それよりも転職活動を始めて、信頼できる企業に就職する道を選ぶ方が人生にとっては良い決断になるかもしれません。裁判をする場合は、過去に損害賠償請求が通った事例などを参考に準備を進めるのがいいでしょう。
■内定通知後の内定取り消しや不採用をもらわないための対策
中途の場合は内定承諾書などがないため、労働契約を結ぶ段階までは口約束の期間が続くという危うい状況が一定期間あります。口頭で内定通知を証明しづらい状態を長引かせないために、下記のようなことを行っておきましょう。
・内定通知後には内定のお礼メールを送っておく
まずは内定通知を口頭で頂いた場合は、内定通知をいただいたお礼メールを送っておきましょう。その際に言われた内容などもメール内に書いておいてください。また、可能であれば音声データをとっておくと安心です。
・内定通知後にはすぐに書面の手続き依頼を行う
さらに内定通知後にはいつ書面の手続きを行うのか、入社までの段取りはどうなるのかを確認しておきましょう。書面手続きの依頼をしても返答がない場合は内定取り消しをしてくる可能性もありますから、十分に注意してください。
・内定通知は企業側の人事権者から聞く、エージェントならメールを転送してもらう
内定通知はその企業の人事権者から聞いておかなければ、内定通知を受けたとはみなされません。そのため、エージェントなど仲介業者が挟まっている場合は、内定通知のメールを転送してもらう、書面をすぐに送ってもらうなどの手続きをお願いしましょう。
・内定取り消しに当てはまるような行動はしない
こちらは当たり前のことではありますが、内定取り消しの条件に該当するような行動はしないよう注意してください。
全体を通してですが、基本的に書面を交わすまで決定的な行動はしないという考え方が重要です。企業側が内定を出してすぐに書類手続きに移れない理由は基本的にはないはずですから、段取りがどうなるのかなどをメールでもらうようにしてください。こういった証拠となるものを残すなど、最大限の注意を払って手続きを進めるようにすると、不安な期間も安心して過ごせるでしょう。
■まとめ
新卒のときは「内定辞退がいつまでにできるのか」というポイントを気にされていたみなさんも、中途の転職活動では「内定取り消しがあるかもしれない」ということを頭に置きながら行動することが重要になってきます。口頭で内定通知が出たとしても浮かれずに段取りを確認する、証拠となるものの提出を求めるなど、気を抜かない対応を心がけましょう。幸せな転職を成功させるためにも、ぜひ参考にしてみてください。