転職のきっかけとなる変化は自分自身のキャリア以外に結婚した・子どもが産まれて家族が増えたなどの環境変化によっても、もたらされるもの。これから子どもを育てていくにあたり、「子どもを育てるのにはどれくらいのお金が必要なのか」「転職をするとしたら、どれくらいのお給料が必要なのか」を知っておくことが重要です。
自分の子どもにどのくらいの習い事をさせるのか、学校の選び方、自治体の補助などによっても必要な費用は大きく異なってきますが、おおよそどのくらいかかるのかという点も含めて転職のときに考えておくべきポイントをまとめてご紹介します。
子どもも含めた計画をしっかり立てるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
■そもそも、子どもを育てるのにかかる費用はどのくらい?
通説では子ども1人につき3000万円~5000万円程度かかるといわれていますが、実際はどのくらいかかるのでしょうか。ここで、内閣府が出している子育て費用に関するデータを見てみましょう。
◯(1)子ども1人あたりの子育て費用
まずは子ども1人あたりにかかる子育て費用です。
こちらは家庭内の育児労働1997年から2002年の5年間の間でも、子ども1人あたりの子育て費用が1997年時点では約150万円/年、2002年時点では約160万円/年と、年間あたり10万円上がってきているのがわかります。
兄弟姉妹の子どもや周囲の子どもを見ていると、習い事の増加、教育費の増加などを感じている人も多いのではないでしょうか。また、このデータでは2002年までしかありませんが、英語・プログラミング必修化などに伴って、さらに教育費が上がっていることも考えられるため、今はこれ以上に上がっている可能性も高いといえるでしょう。
この年間費用を22才までと考えると、1997年時点のデータでは3300万円、2002年時点データでは3520万円かかる計算となっていますから、通説もあながち間違いでないことがわかります。
◯(2)年齢別にみた子ども1人あたりの子育て費用
次に年齢別にどのような変化があるのか、子育て費用のデータを見てみましょう。
家庭内の育児労働分はグレーで、それ以外は斜線で表記されています。やはり成長につれて教育費などの増大があるためか、徐々に金額が上がっていっていることが見て取れます。
大学に入ってしまえば、塾や予備校などの費用負担がなくなるためか、費用が比較的落ち着いていることがわかります。しかし0~5才の家庭内育児労働を除くと、6~17才までだいたい年間200万円程度かかるため、やはり子育ての費用はかなりかさんでくると認識しておいた方がいいでしょう。
◯(3)年齢別にみた公費負担・私費負担の状況
年間200万円が家計に上乗せされると考えると気が重くなってしまう人も多いかもしれませんが、公費で負担してくれる部分もあります。公費の負担分も年齢別に見ていきましょう。
上の表は金額が明示されたもの、下の図表はその割合がわかりやすいようグラフ化されたものです。実際の負担分が斜線で描かれていますので参考にしてみてください。
実際の自己負担額を見てみると、1997年度は0~5才が約55万円/年、6~11才が約83万円/年、12~14才が約106万円/年、15~17才が約116万円/年となっていて、2002年度は0~5才が約52万円/年、6~11才が約82万円/年、12~14才が約212万円/年、15~17才が約218万円/年となっています。2002年度の方が公費負担の割合が上がり、子育て費用の負担が楽になっていることがわかります。
2019年度10月から幼児教育・保育の無償化がスタートし、幼稚園・保育所・認定こども園などは3~5才児、 住民税非課税世帯の0~2才児の利用料が無料となっています。
そのため、0~5才までの私費負担を減らすことができる計算になり、より子育てしやすい環境が整備された状態となりました。子育てがしやすい自治体に引っ越しをし、幼稚園・保育所・認定こども園などに子どもを入れることも検討しながらかかる費用を計算していきましょう。
これから公費負担が増えていく可能性がありますが、うまく認定に入れない場合もあります。一旦2002年度の金額をベースに、0~5才が約52万円/年、6~11才が約82万円/年、12~14才が約212万円/年、15~17才が約218万円/年と考えて計算していきましょう。
■子育てを考えたとき、転職をした場合にどのくらいの給料が必要なのか
◯子ども1人の場合にかかる子育て費用
0~5才が約52万円/年
6~11才が約82万円/年
12~14才が約212万円/年
15~17才が約218万円/年
18~21才が約112万円/年※年齢(5段階)別子ども1人あたりの子育て費用(家庭内育児労働費用を含む場合)の費用を引用
◯子ども2人の場合にかかる子育て費用
0~5才が約102万円/年
6~11才が約162万円/年
12~14才が約424万円/年
15~17才が約436万円/年
18~21才が約224万円/年
◯勤労者世帯(世帯人数が3~4人)の消費支出
こちらは2人以上世帯の消費支出(月)の消費支出をまとめた総務省のデータです。
・世帯数は1995
・世帯人員は3.6人
・世帯主の年齢が34.1才
・実収入が約51万円(2人共働きで25.5万/人稼ぐと仮定しています)
・可処分所得が約43万円
・消費支出が約27万円
・黒字が約16万円
上記のようになっています。全国の統計となるため、お住まいの地域によっては消費支出がこれ以上に多いという場合もあるでしょうが、
可処分所得が43万円×12ヶ月=516万円と考えて計算します。
こども1人あたりの子育てにかかる金額を計算すると、年間にならすと年間116万円程度の費用がかかることになります。そのため、毎年それだけの費用を捻出できるように計算してみましょう。
◯共働きの場合の月間手取り収入と家計の内訳イメージ(子ども1人を想定)
月間 |
年間 |
|
手取り収入 100% 30.0 |
43 |
516 |
住居費 25% 7.5 |
10.75 |
129 |
通信費 1% 1.8 |
0.43 |
5.16 |
食費 15% 4.5 |
6.45 |
77.4 |
水道光熱費 5% 1.5 |
2.15 |
25.8 |
保険料 4% 1.2 |
1.72 |
20.64 |
被服費 3% 0.9 |
1.29 |
15.48 |
交際費 2% 0.6 |
0.86 |
10.32 |
小遣い12% 3.6 |
5.16 |
61.92 |
日用品・雑費 2% 0.6 |
0.86 |
10.32 |
教育費 30% |
12.9 |
154.8 |
支出合計(単位:万円) |
42.57 |
共働きの場合1人あたり25.5万円の額面があれば、これだけの費用が捻出できる計算です。
◯世帯主1人で働く場合の月間手取り収入と家計の内訳イメージ(子ども1人を想定)
月間 |
年間 |
|
手取り収入 100% |
33 |
396 |
住居費 25% |
8.25 |
99 |
通信費 1% |
0.33 |
3.96 |
食費 15% |
4.95 |
59.4 |
水道光熱費 5% |
1.65 |
19.8 |
保険料 4% |
1.32 |
15.84 |
被服費 3% |
0.99 |
11.88 |
交際費 2% |
0.66 |
7.92 |
小遣い12% |
3.96 |
47.52 |
日用品・雑費 2% |
0.66 |
7.92 |
教育費 30% |
9.9 |
118.8 |
支出合計(単位:万円) |
32.67 |
392.04 |
教育費は予定よりオーバーするように計算し、3割を捻出しています。お子さんが2人の場合は五月雨の形になりますが、教育費が2倍かかる計算になるため、2名以上いる場合は人数分を上乗せして計算するようにしてください。逆に世帯主だけが働いている場合は2名が扶養に入っていると想定し、額面で年収420万円程度稼げていれば、この内訳で教育費を担保することができます。
また、住居費や通信費、お小遣いなどにどの程度の費用が必要になるかによって、必要な収入が異なってきます。そのため、お住まいの地域やお小遣い額を計算し、必要収入を算出してみると、転職先選びの参考となるでしょう。
■平均年収について
国民の所得分布状況を表しているのが、下記の表です。中央値は427万円となっているため、年収として獲得するのが難しいわけではないことがわかります。
自分の職種の年収平均などを見て、転職する際に職種自体を変更すべきか、それともこのままの職種で問題がないかは早めに判断しておくようにしましょう。
■まとめ
子育てをする際に気になる養育+教育費の問題。育てるためにどれだけのお金がかかるのかがわかっていれば、職種を変更したり、大手企業を目指したりして年収を上げなければならないのかどうかがわかるはずです。
どの程度の暮らしを目指すかによってもちろんそうすべき場合もあるかもしれませんが、公費で負担できる部分と私費負担の内訳がわかるだけでも、計画が立てやすくなるのではないでしょうか。ぜひ参考にして満足のいく計画を立ててみてください。
※出典
1:内閣府「社会全体の子育て費用に関する調査研究報告書概要」5.子ども1人あたりでみた子育て費用
3:厚生労働省ホームページ 「 平成21年国民生活基礎調査の概況 2 所得の分布状況」
4:総務省統計局ホームページ 家計調査報告(家計収支編) 平成30年平均 表Ⅰ-2-2 世帯主の年齢階級別家計収支(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)-2018年-