書類でも面接でも聞かれることが多い、希望年収。しかし、「希望年収って言われても…」「それは高ければ高いほどいいよね…でもどう答えたら?」と思っている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなお悩みを抱えている人に向けて、希望年収を聞かれた場合の答え方、準備方法をまとめてご紹介します。転職活動の際に困って答えられないということのないよう、ぜひ参考にしてみてください。
■希望年収を面接で聞かれる理由とは?
まず、企業側がなぜ希望年収を面接で聞いてくるのかがわからないという人のために、希望年収を聞いてくる理由について解説します。その理由は2つあります。
・想定給与と合うかどうかの判断
企業側としては採用を始める時点で、「このポジションの人に対して払える年収は、◯◯◯万円~◯◯◯万円まで」と年収の範囲が決まっています。そのため、書類・面接の段階でその人の提示してきた希望年収と想定給与が合っていなければ、不合格にするというパターンが多いのです。
もちろん、想定給与を上回る働きをしてくれそうだと感じた場合、上司にかけあうなどして新たなポジションを据えて採用するということもありますが、これは非常にまれなケースです。
・候補者の自己評価を知るため
2つ目の理由としては、候補者の自己評価を知るためというものがあります。候補者を労働市場に照らし合わせたとき、その候補者の提示してきた希望年収に見合うレベルにあるのかを判断し、採用不採用を決める場合も多いです。
労働市場から見てあまりに乖離がある場合は正しく自己評価ができない人とみなされ、採用を見送る理由とする企業もあります。自分が労働市場の中でどの位置にいるのかを正しく把握できない人は、相場観からズレやすく正しい判断が下せない可能性があるからです。
例えば、「給与水準が高い大手企業に入社したから、今の給与をもらえている」という事実がわかっておらず、「自分の実力のみでその給与がもらえる」と判断している場合は市場をわからずに目の前にあることをそのまま受け入れているだけといえます。
ビジネスでは市場や市況を見ることが重要ですので、そのあたり正しく判断できない人を採用したいと思う企業は少ないでしょう。企業側は、以上のような理由から希望年収を面接で聞くようにしています。どういった目的で聞かれているのかをよく把握しておき、マイナス評価をもらわないように注意しましょう。
■希望年収を伝えるときに重要な根拠を作るための準備3つ
では次に、希望年収を伝えるときに重要な根拠を作るためにやる3つのことをご紹介します。「単なる希望」でこの年収が欲しいと伝えるのではなく、この年収を希望する根拠をしっかり提示できるようにしましょう。
◯現状把握
まずは、現状把握からです。希望年収で根拠を説明するには、現職でもらっている給与が一体どのような根拠で支払われているのかを把握する必要があります。
・今の年収と内訳を把握しよう
希望年収などを含め、転職活動中に目にする年収は手取りではなく、額面となります。まずは額面年収がいくらなのかを把握しましょう。そして、その内訳を確認してください。一般的には基本給に職能給や役職給、交通費、営業職などの場合はインセンティブなどが年収に含まれます。
・どんな仕事が年収に反映されているのかを考えよう
基本給は他社と比べて高い・低い・同程度のどれに当てはまるでしょうか。職能給・役職給はそれぞれどの程度の額ですか?インセンティブが年収に占める割合はどの程度でしょうか。細かく確認してみてください。自分の年収の構成を知れば、どんな部分の仕事が年収に反映されているのかがわかります。
・手当や待遇部分も金額に換算しておこう
また、年収部分には入らないものの、各種手当なども金額換算しておきましょう。住宅手当・子ども手当、福利厚生で得られる待遇など、普段利用しているものを金額換算しておくと、その手当がない企業に入った場合に差分として必要な金額として提示する根拠になります。年収に含まれていないため見逃しがちですが、積もり積もって大きな額となりますので、注意しましょう。
◯未来予測
次に現状を踏まえて、未来予測を行います。
・自分が貢献できる価値(スキル・経験・能力)とは何かを明確にしよう
現状把握で行った給与の内訳や給与に占める割合などを把握したことで、あなたのどんな部分が評価されているのかがわかったはずです。それを踏まえて志望先の企業に転職した場合、あなたが提供できる価値(スキル・経験・能力)にはどんなものがあるでしょうか。
営業であれば、「与えられた目標(予算)を確実に達成することがインセンティブという年収の◯割を占める価値を生み出している」とわかります。同様に自分のスキル・経験・能力がどんな風に、どのくらい価値提供できているのかを把握しておきましょう。
・過去実績を元に算出してみる
インセンティブのように明確にわかれば一番ですが、あなたが提供している価値がそのまま◯◯給という項目に当てはまらない場合は、あなたがその仕事をできるようになってから上がった給与額を参考にしてみるといいでしょう。
これまでの給与変化を見れば、どの技能がどの給与分の金額になっているのかがわかり、根拠となる金額提示ができるはずです。
◯希望年収範囲の決定
最後に、これまでの現状把握と未来予測を基に、最低年収(必須)~最高年収(希望)の範囲設定を行いましょう。入社前の段階で、最終的には希望年収の最低と最高を聞かれる可能性もあります。事前に決めておき、スムーズな交渉ができるようにしておきましょう。
■希望年収を面接で聞かれたときの答え方
では実際に、希望年収を面接で聞かれたときの答え方についてご紹介します。ポイントは2つです。
・根拠を提示しながら希望年収を伝える
希望年収を伝えるときにまず重要なのは、準備した根拠を提示しながら希望年収を伝えることです。希望年収を伝えるときに根拠となるものがないと、企業側も「どういった理由でその希望年収を提示してきているのか」がわかりません。
根拠があれば、たとえ想定年収を上回っていても採用する可能性があります。しかし、根拠が曖昧な場合は希望年収を聞いた時点で、不合格にされてしまうこともあるかもしれません。そうならないためにも現状把握・未来予測で準備した自分がどんなスキル・経験・能力を持っていて、それを志望先企業のどんな部分に活かせるのか。そしてそれを活かすとどの程度の貢献ができるのかをアピールしましょう。
・押し通すことではなく、企業側の判断に従う意志があることを伝える
希望年収を伝えるのは重要ですが、伝えたいのはその金額を押し通そうという意志ではなく、あくまで企業側の判断に従うという考えです。希望年収のみを伝えてしまうと、希望年収を下回った条件では受けないということだけが伝わります。
しかし、希望年収の後に(自分の希望年収はあくまで◯◯◯万円であるものの、企業側がそれに見合わないという判断であれば)企業側の判断に従うという内容を伝えているだけで、与える印象は大きく変わってきます。
まずは現状把握→未来予測→範囲の設定を行ってからこの伝え方をすれば、志望先企業に失礼だと思われることなく、あなたの希望がしっかり伝わるでしょう。そしてそれに見合う働きができると思ってもらえれば希望年収通りの提示をもらえるはずです。
あとは自分が本当に提示された条件で働きたいかだけを判断すればいいため、スムーズな転職活動ができるでしょう。
■希望年収を聞かれた際のNG回答
・自分の生活をベースにした根拠はNG
希望年収の根拠として、「生活費としてこれだけ必要だから」という理由はNGです。企業側にとってみれば、あなたの生活費は事業運営とは関係ない話。企業への貢献度に合わせて給与を判断しているのに、生活費というまったく違う基準を持ち込まれても納得できるはずがありません。
あくまで給与は貢献度への対価となることを忘れず、自分都合を伝えないようにしましょう。希望年収の高さよりも、自分都合を伝えてくる感覚のズレが企業側に違和感を覚えさせる可能性が高いです。
・異業種、異職種でも前職と同程度の年収を希望するのはNG
異業種・異職種への転職の場合でも、前職と同程度の年収を希望したくなる気持ちはわかります。しかし、異業種・異職種への転職でいきなり経験者と同じだけの貢献ができるわけがありません。そういった場合は変に年収に固執することなく、これからの貢献度で年収を上げていくという考えに切り替えるようにしましょう。
年収にこだわり過ぎてしまうと、希望年収で入社できたとしても成果をすぐに上げなければならない状況に追い込まれてしまい、苦しい思いをする可能性が高いです。異業種・異職種に転職した場合は生活が少々厳しくなっても固定費を下げて転職をするなど、最初の年収にこだわらなくても済むように自分の生活をカスタマイズすることが重要です。
■まとめ
面接で希望年収を聞かれた場合の対処方法について、「希望年収を面接で聞かれたときには伝えてもいいのか」、「どのような答え方をすればいいのか」、「根拠を作るにはどういった準備方法があるのか」についてまとめてご紹介しました。
一見根拠がないように見える希望年収ですが、現状把握と未来予測を行えば誰でも根拠を提示できることがおわかりいただけたのではないでしょうか。きちんと準備を行えば、誰でも納得してもらえる根拠を持って面接に臨めるはずです。
交渉する段階になるとデリケートな話題のため難しさを感じることもあるかもしれませんが、今後の生活に関わってくる重要な項目です。ぜひ面倒がらずに準備をし、希望通りの条件で内定を獲得していきましょう。