「内定承諾書を提出したのだが、その後、もっと行きたいと思える企業から内定をもらったため辞退したい・・・」

結論から申し上げますと、可能です。その背景として、憲法で「職業選択の自由」が保障されているからです。とはいえ、内定を承諾後にお断りするのは、誰もが気が引けることだと思います。断り方次第では、トラブルに発展することもあるナイーブな問題です。
ですが、人生に大きな影響を与える転職。真剣に考えるからこそ、上記のような場面は、例外ではなく、一般的に起こる事象だと思います。ここでは、内定承諾後の辞退についてご説明できればと思っております。

 

内定通知書について

まずは、内定通知書とはどのようなもの何かについてご説明いたします。
内定通知書とは、採用企業が入社に値すると判断された応募者に対して、社員として採用する旨を通知する書類のことです。内定通知書は、労働条件通知書と同じように労働条件を記すものの、その内容は法律によって義務付けられたものではなく、採用する側である会社の意向によるものとなります。

また、内定通知書はあくまでも内定の旨を伝える書類であるため、基本的には新卒者と転職者で内定通知書の内容が異なることはありません。ただし、転職者の場合、新卒者と比べ、採用から入社までの期間が短いケースが多いため、内定通知書を発行せず、メールや口頭で伝えたうえで、入社手続きに進む場合がございます。

このように内定通知書を発行せずとも、口頭のみで内定通知を済ませてしまう方法が認められています。とはいえ、口頭の場合ですと、入社後のトラブルにも発展する可能性があるため、できる限り、書面やメールで通知してもらったほうが確実だと思います。

 

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内定承諾後の辞退について法的効力はあるのか?

結論から申し上げますと、法的効力はありません。ただ、応募者が企業から正式な内定通知を受け、両者間で採用・入社の意思を確認した段階で、労働契約が成立するとみなされます。この段階での労働契約は、「初期付解約権留保付労働契約」と呼ばれるものです。たとえば新卒採用では、卒業を条件に4月1日を入社日として働き始めるのが一般的であり、卒業できないなどの特別な事情がある場合は解約が可能だからです。

また、企業側にも内定者を取り消すための権利が留保されています。ですが、採用企業側にとっては、内定を出した後に、採用人数を減らしたい、社風に合わないと考えても、合理性が認められない限り、一方的な契約解除は不可能となっているため、法的効力は強いものだと言えます。

一方で、労働者側からすると、内定通知書の法的効力は弱いと言えるでしょう。憲法でも職業選択の自由を保障されており、たとえ内定承諾した後でも内定辞退が可能だからです。ただ、このように権利としては認められているものの、内定承諾後の辞退は、採用企業に大きな迷惑をかけてしまうことだけは認識しておくべきです。

企業は採用活動において、費用をかけて募集広告を出したり、現場で働く社員の時間を割くなどして、多大な労力をかけています。また、採用人数が限定されている企業の場合、内定を出したということは、他の候補者にお断りの連絡をしている可能性もあります。こうした状況の中で内定辞退となると、また一から採用活動を開始しなければなりません。

人生に大きな影響を与える大事な転職であり、かつ法的効力がないのですが、採用企業との労働契約を破ることになりますので、「非常識なことをしている」という認識を持ち、誠意をもってお断りの連絡をするべきです。

内定辞退をするときは、メールや対面よりも電話で行うほうがいいでしょう。メールの場合ですと、内定辞退という行為に対して軽薄だと思いますし、対面の場合ですと、説得するために長時間拘束されたりする可能性もあるため、内定辞退の決意が固まっているのであれば、電話で申入れするのがいいと思います。ただ電話をすると、「あなたのせいで採用計画が狂った」「損害賠償を請求せざる得ない」などと脅しをかけてくる企業も一部ございますが、法的効力はありませんので、真に受ける必要はありません。

 

辞退の申入れは、入社2週間前までに速やかに行う

民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

内定辞退を行う場合は、入社2週間前という民法の定めに沿った内容で申入れしたほうがいいです。この期限を過ぎてしまった場合は、労働者側にもデメリットが生じる可能性があることだけは認識しておいてください。上記にもお伝えしたとおり、実際に勤務していないにせよ、労働契約が適用されています。法律上、契約が解除されるのは申入れしてから2週間後となります。

そのため、厳密に言えば、A社に辞退を申入れたのが入社しようと思っているB社の入社日まで2週間を切っていた場合、2社と契約していることになります。それでも大目に見てもらえるケースのほうが多いですが、会社によってはそれが理由で入社できないということもありますので、どちらにせよ、内定辞退を決意したら、速やかに辞退の申入れをすることをおススメします。