転職活動が無事に終わり、次のステップもスムーズに進めたいという思いがあっても、意外に難航することも多い退職交渉。退職交渉を行うには、さまざまなことを事前に検討しておくことがとても重要となります。
この記事では「実際に退職交渉が難航してしまったときにどうすればいいのか?」「入社日が迫ってきている」など焦ってしまう状況でも活用できる対処法をご紹介します。退職交渉が難航しているなと感じているならぜひ参考にしてみてください。
■退職交渉が難航する理由
まず退職交渉がなぜ難航するのか、企業側の思惑を考えてみましょう。主にはこれらのような理由で退職してほしくないと考えているケースが多いです。把握しておくと退職交渉もしやすくなりますので、ぜひ覚えておきましょう。
・会社の士気が下がる
連続して人が辞めている場合、あるいは人数規模が少ない組織などでは退職するに伴って会社の士気が下がることも多いです。20名の中の1人が辞めるとなると与える影響が大きいことはイメージがつくのではないでしょうか。
また、繁忙期が終わった時期など、退職を言い出しやすい時期には連続して人が辞める場合もあります。重要なポストについていた人が連続して退職するなどがもし起こると、「このままこの会社にいて大丈夫だろうか」と今まで不安に思っていなかった人も不安になってしまうこともあるでしょう。このようなことで会社全体の士気が下がる可能性があるため、退職を思いとどまらせようとして退職交渉が難航することも多いです。
・退職した分の負荷が残る従業員にかかる
退職する人が受け持っていた仕事が多ければ多いほど、残る従業員の負荷が大きくなります。負担がかかれば「報酬と仕事の多さが割に合わない」「残業が増えた」などで、会社に対する不満が募りやすくなるため、残った従業員が離職するリスクを上げてしまいます。
その引き金になる可能性のある退職だと上司が判断した場合、退職交渉は難航するでしょう。
・上司の評価が下がる
これまでの流れとは異なりますが、上司自身の評価が下がることも退職交渉が難航する理由の1つです。基本的に役職者は、部下のマネジメントがミッション。そのため、自分の管轄下の人材が離職する=その上司の責任となることも多く、評価制度に組み込まれていることも多いです。
1年に○名以上の退職者が出た場合などの基準が設けられている企業の場合は、退職交渉が簡単に進まないと予想できます。上司の評価制度まで知らない場合もありますが、こういった理由で退職交渉が難航することもあると覚えておくといいでしょう。
■退職を長引かせる企業からの引き止め方法
では次に、退職交渉を難航させる企業からの「引き止め」方法についてご紹介します。下記のような引き止め方法が定石ですので、それぞれの対抗策を考えておきましょう。
・部署異動
基本的に退職=現状に不満を持っているということですので、「部署を異動させれば辞めずに済むのでは?」という考えが浮かぶのは当たり前です。環境に慣れてきたときに不満が生じやすくなりますから、異動させることでリセットできることも多いです。
退職したいと思ったときに、人間関係が理由という人は多いですから、新しい部署へ異動することで、不満が解消できるのではないかという理由で引き止めを行うケースは多いです。すでに退職交渉が難航している場合、部署異動を打診されたという人も多いのではないでしょうか。
・給与アップ
次に多いのが給与アップの打診です。労働時間・仕事量が割に合わないと感じて退職をする人も一定数いるため、そのあたりも打診されることが多いです。給与が増えることは魅力的ですので、思いとどまる人も一定数いるでしょう。
そのため、この2つは定石の引き止め方法として使われます。
・引き継ぎ先が決まるまで延期
次からは交渉というよりはお願いに近い引き止め方法ですが、「引き継ぎ先が決まらないから」「引き継ぎ先が決まるまで退職しないでほしい」という引き止めです。どんな事情であれ人が退職すればその分の仕事を誰かがやることになります。それによって「迷惑をかけてしまう」という退職者側の気持ちを理解し、「なんとか考え直してくれないか」あるいは「決まるまでの間だけでいいから保留に」という引き止めをしてくるケースも多いです。
・辞められたら困る
さらにお願いの度合いが強いのが、「辞められたら困る」というものです。「期待して育ててきてこれからこの仕事を一緒にやろうと思っていた」「途中まで一緒にやってきたんだから最後まで一緒にやり遂げよう」「仕事が回らなくなる」などさまざまな理由があります。
実際に困らせてしまうこともあるでしょうが、退職する権利は誰にでもありますから退職する意志が堅いのであれば、こういった引き止め交渉には応じないのが鉄則です。これらの交渉にゆらぐ姿勢を見せると、交渉次第で残ってくれるという会社側の期待感を上げてしまい、より退職交渉が難航することになります。
■退職交渉が難航したときの対処法とは?
では退職交渉が難航したときの対処法についてご紹介していきましょう。まず退職交渉をする際の大前提からご紹介します。最初に直属の上司に退職のお願いを持ちかけてください。そして、退職の意志が堅くいつまでに退職したいと考えていると伝え、退職手続きを踏ませてほしいとお願いします。
そこから引き止めが入り、1~2週間程度直属の上司とやりとりをすることが予想されます。その引き止めを受けても退職の意志が変わらないと伝え、再度退職手続きを進めていただくお願いをしてください。それでも難航して退職届をどうしても受け取ってもらえない場合などにこの対処法を行うようにしましょう。できるだけ円満退職できるよう、退職する側が準備することも大切です。
・入社日が決まっているのでこれ以上の慰留は難しいと伝える
次の会社が決定しており、退職届提出の期限があるため、退職届けを受け取って欲しいということを伝えましょう。基本的に退職届の受理は社内規定をベースに考え、最終的には法律で決まっている2週間前までに退職の意志を書面で伝えることが必要です。
・交渉しても難航した場合、さらに上の役職者に伝える
上記の交渉も難航する場合は、直属の上司の上司に退職意志が堅いこと、いつから交渉をしているが聞いてもらえない、引き止めにあって断ったが退職届を受理してもらえないなど、これまでの経緯を話して、退職届を受理してもらいたいと伝えましょう。
・労働基準監督署に相談
上司の上司も受理してくれなかった場合は、最終手段として労働基準監督署に相談してください。
・内容証明郵便で退職願を送る
法律で決まっている退職日の2週間前までに退職届を内容証明郵便で受け取ってもらうよう手配しましょう。どうしても受け取ってもらえない最終手段として行うものです。内容証明郵便で送ることで、相手は受け取らざるを得ない状態になります。いくら意志を伝えたと言っていても、証拠がありません。内容証明郵便で送れば、退職するという意志を伝えた証拠が作れます。
これは最終手段ですので、できるだけ交渉がうまくいくようにできることも合わせてご紹介します。
■退職交渉を難航させないためにできること
嫌になって退職を考えていたとしても、一定期間お世話になった会社であることは紛れもない事実です。できるだけスムーズに円満退職できるよう、下記のことに留意しながら退職交渉を行いましょう。
・相談ではなく意志が決まっていることを伝える
まず一番重要なのは、自分の退職意志を固めておき、それをゆるぎのない意志として伝えることが重要です。確かに迷惑をかけてしまいますし、わがままと言われればそれまでなのですが、それによって退職する権利がなくなるわけではありません。
そのため、「退職しようと思っているのですが」ではなく「勝手ながら○月末に退職させていただきたいです。ご迷惑をおかけしますが、宜しくお願いいたします。」などと伝えるようにしましょう。
その後交渉をされたときにも、結論は変わらないと都度伝えておくことが重要です。あまり期間を空けてしまうと退職する気がなくなったと思われかねないですから、一日考えてみますが、結論は変わらなかったなどと伝え、意志が堅いことを伝えるようにしてください。
・退職する時期に繁忙期は選ばない
退職する時期が繁忙期の場合は迷惑極まりない行動ですから、その時期は避けて行うようにしてください。繁忙期の場合は退職交渉が難航しないようなケースであっても、うまくいかないことが多いです。お世話になった会社に迷惑をかけるようなことはやめましょう。
・引き止めにかかっている期間を読んで退職を申し出る
前に退職した人にヒアリングができれば聞いておき、退職したい月の2カ月前には退職交渉を始めるようにしてください。重要ポジションについている人は、もっと前から伝えておくようにしましょう。
・退職理由にマイナスな理由を出さない
退職交渉時に理由を聞かれた場合も、マイナスな理由は伝えないようにしましょう。不満を伝えると不満を解消する引き止め策が多数出てきて退職交渉が難航します。「わがままですがどうしてもこれがやりたい」など何を言われても同じことを返して、交渉の余地がないということを伝えてください。
■まとめ
退職交渉が難航する理由やスムーズに進まない場合の対処法をまとめてご紹介しました。デリケートなテーマですし、会社に迷惑をかけてしまうという後ろめたさでなかなか強く言えないという人も多いでしょう。しかし、退職交渉を長引かせると自分の内定が取り消しになってしまうことも考えられます。
そうならないように、やるべき準備や心構えをしておき難航させないようにぜひ今回の記事を参考にしてみてください。