営業職にこれから転職しようとしている人の場合、「営業=数字を追う人」というイメージだけをお持ちではないでしょうか?しかし、実際に営業が行っている仕事内容は、数字を追うだけではありません。企業の中で営業がどんな役割を担っているのか、営業が行っている詳細な仕事内容などをまとめてご紹介します。
営業の仕事を詳しく理解したいと思っている人はぜひ参考にしてみてください。
■営業の仕事内容【種類別】
◯法人営業
企業などの法人を対象に営業活動を行う職種で、商材、サービス、業種によって様々な違いがありますが、法人営業は大きな特徴があります。
まず、会社の代表として顧客とコミュニケーションをとります。顧客の窓口担当は、会社を代表し、販売会社を代表する立場として商談を進めていきます。対担当の個人間での商談ではなく、あくまでも会社と会社のビジネスという意識と自覚が必要です。
ビジネスコミュニケーションとして、ビジネス活動に必要な製品やサービスを要望、供給といったビジネス上のお互いの担当(立ち位置)を把握して進めることが重要です。
顧客の市場、業界の情報を把握し、問題点を発見し課題を抽出の上、提案型営業を実践していくスキルを身に着けていきましょう。
また、顧客のエージェントとして、一時的に利益を損なうような対応をしてでも、顧客との便宜を図り、生涯的な利益(顧客生涯価値)を最大化にするためのビジネスセンスも法人営業には重要といえます。
◯個人営業
個人営業は、対企業などではなく個人を相手にモノやサービスをお買い上げいただく仕事です。様々な商材があります。訪問で顧客の声をヒアリングし、一人一人の顧客に提案をしてお買い上げ獲得を目指していきます。そのために自ら資料作成を行ったり、テレアポや飛び込み営業などの、独自のうまく発展しやすい法則をまとめていたりします。新規開拓も既存も、顧客との信頼関係を築くことが不可欠で、完全に個人の人間力が試されます。商品力が寄与しやすい法人営業と比べ、個人営業では営業マン能力が試される部分が大きく、強い営業スキルを身につけることができる仕事と言えます。 顧客に「君からなら購入する。」と言われ、やりがいを感じる営業は多いです。
◯新規開拓営業
新規営業は取引のまだない企業に対してアプローチします。 その名前の通り今までお取引をいただいていない企業や部署に対してアプローチし、新規でお取引をいただくための営業活動を行うことを指します。まだお取引がないところに対してアプローチするわけですから、アプローチする先の選定から行う必要があります。
・営業先選定、リスト作り
自社の商品・サービスを求めていそうな業界や企業規模・エリアの会社や窓口を選定し、営業先のリストを作成します。企業によってはこれを営業企画という営業のサポートを行う部署が代行してくれる場合もありますが、時間や余裕がない場合や方針によっては営業一人ひとりがリスト作成を行うことも十分あります。
営業手法はメール・電話・飛び込みなどがメイン。それ以外にHPからの問い合わせ(反響営業:企業からの問い合わせがあって、それに対して営業を行うこと)が増えるように工夫をするマーケティングなどは、営業企画やマーケティングの部署が担当するケースも多いです。規模が小さい場合は、それを営業部の中の一部人員で行う場合もあるでしょう。
会社側で営業手法を決めている場合もありますが、個人で決めていい場合はメール・電話・飛び込みなどの中から、商材の特徴や単価などに合わせて最適な営業手法を考え、実行していきます。
例えば数百万する商材を、飛び込みで買ってほしいというのは少々無理があるでしょう。じっくり腰を据えて検討すべき案件ですし、飛び込みの場合は決済者(契約をすると決める決定権を持っている人)にアプローチできないケースが多いです。そのため、比較的低単価な商材を扱う企業が行う営業手法といえます。もちろんこの限りではありませんが、そういう傾向があることは知っておきましょう。
電話やメールなどの場合は、ある程度会話ができることもありますし、呼び出し方によっては決済者に直接アプローチできる可能性も飛び込みよりは高いです。そのため、高い商材の場合や決済者アプローチを行いたい場合は、電話・メールなどの方がアポイントに進む社数を増やしやすいでしょう。物理的な移動も伴わないため、効率的に営業を行えます。
・アポイント取り
リスト作成や営業手法が決まったら、アポイント取りを行っていきます。メールの場合は問い合わせが来るようにメールの文面を作成し、電話の場合はアポイントが取れるようなトークスクリプト(相手の返答によって伝えるべき内容が変化する、話の流れを書いたシナリオのようなもの)を作成し、効率よくアポイントが取れるようにします。
決済者でない人が電話を取るケースも多いため、決済者が席に戻ってくる時間帯を予想して電話をかける、受付の方ではわからず、上司につないだ方が良さそうだと感じるようなトークスクリプトを用意しておくことが重要です。
飛び込みの場合は飛び込みしてから何を話すのか短時間で魅力が伝わるように考え、飛び込みする場所とルートも考えておきます。そこからメールや電話をしたり、飛び込みを始めてアポイントを取っていきます。
・アポイント準備
飛び込みの場合は飛び込みの前に、ある程度興味を持ってもらえる資料などを作成しておきましょう。メールや電話の場合は後日アポイントを取得するということがほとんどですので、アポイント前までに企業情報や困っていそうなこと、自社の商品・サービスがその課題解決に役立つという内容をまとめて資料にしておきます。
汎用企画書という初回アポイントの際に使える資料がある場合は、それをカスタマイズして使うのもいいでしょう。
・アポイント(ヒアリング)
アポイントに行ったら、できるだけ相手先企業に信頼を持ってもらえるように、調べてきた内容を踏み込んで質問していきます。こんなことに困っているのではないかという仮説をぶつけて、相手の課題を引き出すように努めましょう。
仮説が当たっても当たらなくても課題が引き出せれば合格です。その課題に対してどのような解決策を提供できるか、次回提案アポイントの日程を確定して帰ってきます。
・アポイント(提案)
相手先企業の課題に対して、自社商品・サービスを使えばこんなことが解決できるとわかる資料を作成し、提案に向かいます。相手が気になるポイントをまとめ、不安を解消するような内容にしておくことが重要です。
提案内容に対してどう感じたかを聞きながら、クロージング(契約してもらうためのひと押し)を行います。そこで出てきた不足点や課題に感じる点があればその場で答えるか持ち帰るかして、契約を結べるように行動しましょう。
・契約
実際契約という運びになれば、契約にあたっての注意事項を説明し、契約書にサインいただきます。契約の時点で、具体的に商品・サービスをどのようなスケジュールでどう使うかを共有しておきましょう。不安点や課題点がこの時点で出てきた場合には先程と同様に解決する方法を伝えてください。
・フォロー
契約いただいた商品・サービスをうまく利用して課題解決が進んでいるか、困っていることはないかなど定期的に連絡し、課題解決につながるようにフォローしていくと同時に、以前提案した時点で課題に感じていた別の点についても継続して提案していきます。そこから再依頼や別部署との取引などにつながるように信頼関係を築いていきましょう。
◯ルート営業
取引実績のあるクライアントに営業します。
ルート営業の場合はこれまでも取引があるため、基本的にアポイント取りに対策は必要ありません。しかし、その後の提案の重みが異なってきます。
・アポイント取り
定期ミーティングの時間を決めておくなど、最新の状況にキャッチアップできるようにしておくと毎回電話をかけてコミュニケーションを取らなくてもいいため便利です。
・アポイント準備
定期ミーティングのときには新しい役立つ情報を持参し、相手に価値を感じてもらえるようにしましょう。また、本部などに訪問する場合は最近訪問した支社や店舗などの情報をまとめて提出し、このような課題があったと伝えると次の提案アポイントにつながりやすいです。
・アポイント(ヒアリング)
用意した情報を基に情報提供とヒアリングを行い、新たな課題や困りごとがないかを確認していきます。時期によって提案内容が変わることも多いですし、商材によっては納入する量が多くなる場合もありますから、クライアントの業績や支社・店舗ごとの様子を確認し、どのような提案が必要かという宿題をもらって帰りましょう。
・アポイント(提案)
ヒアリングのアポイントでもらった宿題に対して、どのような課題解決ができるかを提案していきます。クライアントからもらった宿題よりも、大きなスケールで提案するのも問題ありません。例えば1シーズンのことを言われていたとしても、年間で考えるとこの時期に◯◯の活動をしておくと良いのではという提案や、中長期計画に基づいた提案など長期的なプランを提案し、クライアントに受け入れられれば、年間・3カ年などの売上見通しを立てられます。
売上のことを先に決めておけば、他に取り組むべき課題に時間を割くことができるため、結果的にクライアントの課題解決が進むことになります。(契約以降はほぼ新規の営業と同じであるため、割愛)
■営業の仕事内容【分野別】
◯商社系の営業
商社の営業は、仕入れた商品を法人や個人へ自社の商流で販売します。高いコミュニケーション能力や、様々な販売の知識が必要となるのと、外国語のスキルも必要になるケースが多いです。 専門商社は多いですが、直近では今までの既存領域にとどまらない新しい領域に進出したり、専門商社の組織・業界再編がよく起きています。最近の専門商社の営業に求められるのは、深い知識と知見、情報収集力と提案力です。
◯食品系の営業
食品メーカーの営業は、自社の商品を卸売り・小売・量販店などに売り込みをします。また、飲食店に販売したりすることもあります。 ルート営業は軸となっています。卸売店などの担当者を回り、自社商品を仕入れてもらいます。 量販店向けの営業は、顧客と継続的に仕入れてもらう関係を維持してもらうためにお客様の目につきやすい工夫をした商品陳列の企画を提案し交渉したり、実店舗で商品説明会をしたりと、いわゆる元祖営業マンとしての営業努力が必要と言えます。 飲食店のエリア営業などでは、量販店などとは異なり、直接商品を仕入れてもらう営業活動をします。 そのために頻繁に顔を出して覚えてもらったりするなどの元祖営業マンのイメージの経験をすることができるかもしれません。
◯IT系の営業
IT営業は、ITのビジネスに関する営業活動をします。 システム構築やソフトウェアの導入、Webのマーケティングソリューション、Webサイト関連の制作などを販売します。 営業スキルだけでなく、商品やサービスの専門的な知識と知見が必要です。 基本的にはIT関連の製品やサービスを販売・提供、また運用する業務があります。 顧客とのコミュニケーションを一任されたり、案件の進行管理をするケースが多く、またプログラマーやSE、デザイナーなどの各担当者とのコンタクトを頻繁に取ります。そのためのコミュニケーションや案件の進行・運用管理に関する業務は多くなりやすいです。 顧客折衝から販売・契約後のアフターフォローまで担当することもあり、最終的には専門的かつトータルで見えた人間性が顧客満足度に影響しやすいです。
◯メーカー系の営業
自社商品を法人顧客への卸し・売り込み、又は個人顧客に売るための営業活動をします。 また、担当商品を販売してくれている顧客が要望した際に欠品にならないように常に在庫管理を行います。 発注状況を把握しながら「欠品をさせてはいけない」という業務が特徴と言えます。
■営業の具体的な役割とは?
◯売上を立て、クライアントの課題を解決する役割
営業の役割は会社の商品・サービスを対象クライアントに紹介し、購入を促すこと。そして購入を継続してもらえる関係性を作りながら、商品・サービスの購入と共にクライアントの課題解決を行うというのが果たしている役割です。 直接売上を立てることのない部門の給与や、利益を上げて商品開発やマーケティングに資金を投資できるようにするのも、営業が立てた売上で賄っているケースがほとんどです。
◯市場調査の役割
現場に出ていることによって、自然とクライアントやエンドユーザーからの意見を収集してきているため、その意見を商品開発やマーケティングにフィードバックし、ターゲット層を見直す情報や次に求められる商品の情報を提供するという役割もあります。 つまり、会社にとっての稼ぎ頭、クライアントの課題解決、市場調査など、企業を運営していくのになくてはならない存在が営業という仕事なのです。単に数字を追うだけではないというのが、おわかりいただけたでしょうか。
■まとめ
このように営業職と言っても売上数字を追うだけではなく、顧客の課題解決やそのために行う地道な現場ヒアリング、情報収集・アポイント準備などさまざまな仕事が存在します。営業が会社で担う重要な役割をよく理解し、その企業ではどのような営業が求められるのかを考えるようにすれば、自ずとどのような自己PRをすればいいかわかってくるはずです。
細かな仕事内容を理解し、これまでの経験で活かせるものがないかをよく考え、自分の転職活動に活かしてみてください。