「無事に企業から内定を頂いた!内定通知書も送られてきたけれど、実はまだ選考中の企業が残っていて、辞退する可能性もゼロじゃない…。」こんなときに気になるのが「内定通知書を受け取ることで、どんな法的効力があるのか」について。企業側&転職者側それぞれの法的効力と、転職内定に関する書類の基礎知識について解説します!

 

内定通知書とは?

内定通知書とは、企業が「労働契約の申し込みを承諾する意思表示」を示す書類です。
そもそも、企業側の「内定」は、書類だけでなく、口頭での通知だけでもその効力を発揮します。そのため、内定通知書の発行に法的義務があるわけではありません。
「面接の最後に内定と言われたけれど、内定通知書がないから不安」という場合は、帰宅後履歴が残るようにメールで「本日は内定のご案内を頂き、誠にありがとうございます。数日以内に家族と相談のうえ、お返事のご連絡をさせていただきたいと思います。今後のご連絡は、引き続き〇〇様宛でよろしかったでしょうか。」など送信し、返信を保存しておきましょう。
なお、一般的な内定通知書の記載内容は以下の通りです。

【内定通知書の記載内容】

・入社予定日
・内定取消事由
・準備が必要な書類(契約書への署名、身元保証書、健康診断書など)

労働条件通知書との違い

第一志望の企業からの内定連絡だとしても、労働条件の確認をせずに内定承諾することはおすすめできません。転職活動の成功は、「内定獲得」ではなく満足な条件での仕事と入社後の活躍です。

「こんなはずでは…。」「思っていたのと違う…」と後悔しないために、基本の雇用条件を確認してから内定を承諾しましょう。
この、基本の雇用条件をまとめた書類が「労働条件通知書」です。雇用条件について企業と労働者の認識が違うと、その後のトラブルを招くおそれがあります。そのため、企業は労働者を雇用する際、労働条件を明確にして、書面によって明示する義務があります。(労働基準法第15条)。

企業によっては、内定通知書と労働条件通知書を兼ねた書類を用意することもあります。「通知書」はあくまで企業側が労働者に「通知」するものであり、労働者に署名捺印を求めたりするものではありません。この通知の後に、雇用契約書の取り交わすことになりますが、こちらは義務ではないため、用意されないケースもあります。

 

必ず書面によって明示することが義務付けられている労働条件」とは?

◆労働契約の期間に関する事項
・入社日
・勤務形態によっては契約期間

◆就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
・仕事内容
・勤務地

◆始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の就業転換に関する事項
・勤務時間(始業終業時間)と休憩時間
・休日の規定
・休暇の規定
・時間外労働、休日出勤の規定

◆賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期に関する事項
・給与額と賞与額
・時間外手当、残業手当
・通勤交通費や住宅手当
・営業交通費や制服代、昼食代などの負担の有無
・社会保険

◆退職に関する事項 (解雇の事由を含む)
・定年

そのほか、以下のような内容について気になる点があれば確認しておくとよいでしょう。

◆他の事項
・給与や賞与の支払い日
・昇給について
・退職金額
・研修期間の待遇と内容
・配属予定部署
・転勤、異動、転籍、出向の可能性

 

労働条件通知書のやり取りが簡単に!

労働条件通知書がきちんと交付されるよう、厚生労働省では「見本」となるひな形を用意しています。最低限の内容であり、企業によってはもっと詳しい内容を記載しているケースもあります。労働条件通知書モデル様式(一般労働者用)

また、これまで労働条件通知書は、「書面」で交付すると定められてきました。手渡しや郵送をする必要があったため、受け取るまでに時間がとられてしまうというデメリットがあったのですが、2019年4月から電子メールなどでの通知も可能になります!じっくり比較検討するためにも、一日でも早く条件確認できるのは嬉しいですね。

厚生労働省は、企業が労働者に書面で交付すると定めている労働条件の通知方法を、電子メールなどでも可能にするよう規制を緩和する。利便性を高めるための措置で、書面として印刷できれば情報管理上、問題ないと判断した。労働基準法に基づく省令を改正し、2019年4月から適用する。参考引用:日本経済新聞 2018/10/8付朝刊

 

 

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企業側からの内定取り消しは、基本的に認められない

企業側からの内定取り消しは「解雇」と同じです。企業が労働者を解雇するのは、相当の理由がない限り、無効となります。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
参考:労働基準法 第16条

 

企業側から内定取り消しができるケース

企業側からは「社会通念上相応の理由」がないと認められない内定取り消しですが、「社会通念上相応」にあたるケースについて確認しておきましょう。

◆内定後に経歴詐称など、選考に影響のある虚偽や無申告が判明した場合

・「賞罰なし」と履歴書に記載しているのに刑事罰を受けたことを隠していた
・大学中退なのに大卒と記載していた
・取得していない資格を申告していた
・経験していない業務について経験者と偽っていた

これらは、労働契約法違反となる重大な理由です。内定取り消しだけでなく、入社後に解雇になる可能性も十分にあります。「ついうっかり」がないよう、十分に注意してください。

 

◆契約した入社日に間に合わない場合

内定受諾後、現職の会社に退職届を出したがスムーズに受理されず、入社予定日に大幅に間に合わない内定後事故に遭い、治療のため入社日に間に合わない
業務開始日を守ることは、業務遂行するうえで必要です。企業によっては相談に応じてくれるケースもありますが、退職日の調整などでミスがないようにくれぐれも注意しましょう。

 

◆病気など、業務遂行ができない見込みがある場合

雇用契約で結んだ「業務」が遂行できないような状態が想定される場合は、内定が取り消されることがあります。

 

◆倒産など、整理解雇が有効となる要件が認められる場合

突然の不正発覚や世界経済の情勢変化で、経営危機に瀕しているために採用が中止になるなどといったケースが考えられます。この場合は、「整理解雇」が認められる場合に準じて内定取り消しが認められる場合があります。

 

転職者側からの内定受諾取り消しはいつでも可能

内定辞退は「雇用契約の解除」と同義とみなされるため、「法的に辞退が認められない」などということはありません。内定承諾書や雇用契約書に署名をしていても問題はありません。

一般的には、内定を通知してから受諾するまで、企業側は数日~1週間程度は余裕を見てスケジューリングしています。いちど受諾した内定を辞退することも可能です。いずれにせよ、誠実に対応しましょう。

 

内定辞退で困ったこと

常識的な期間内での内定辞退の場合、スムーズに受け付けてもらえることがほとんどです。しかし、場合によっては難しい対処をしなければならないケースもあります。内定辞退で起こりうるトラブルについても、念のために把握しておきましょう。

 

◆会社に訪問して話をするように求められた場合

企業側の意図としては、「面会して説得することで、もう一度内定を受諾してもらえるように促せないか」と期待しているケースです。また、「辞退はすでに受け入れているが、今後の採用の参考にするため、内定辞退の理由を直接聞きたい」というケースも考えられます。円満な辞退をするためにも、誠意を持って訪問し、きちんと対応するのがよいでしょう。ただし、非常に高圧的な対応をされた、遠方で現実的ではないなどの場合はお断りすることに問題はありません。

 

◆交通費や受け入れの準備費用などの返還を求められた場合

このようなケースは一般的にほとんどありません。過剰に心配する必要はないでしょう。労働者には解約の自由があります。(民法627条)内定辞退で発生した費用について責任を負うのは、転職者側によほどの不誠実性が認められたケースのみです。自分で転職活動をする際は、内定辞退の連絡や労働条件通知書の確認のやり取りをすべて自分で行なわなければなりません。時間がない中で、シビアな判断をしなければならないプレッシャーもかかります。「入社までの交渉を代わりに行なうサポートがあったことが、エージェントを利用した最大のメリットでした」というご意見も少なくありません。転職活動中でのお困りごとは、なんでも気軽に相談してくださいね!