ベンチャー企業と聞くとパワフルでスピードが早く、優秀な人が集まっているイメージを持つ人も多いでしょう。それと同時に、労働環境の厳しさや設備の不足などを思い浮かべる人も多いはず。そんなベンチャー企業のメリットとデメリットを理解し、転職をする際に気をつけるべきことをまとめてご紹介します。
大手企業からベンチャー企業に転職する人は特にその違いを理解しておかないと、すぐに転職をすることにもなりかねません。企業・転職者お互いにとって良い転職となるように、ぜひ参考にしてみてください。
■ベンチャー企業の定義
ベンチャー企業への転職について語る前に、そもそもベンチャー企業とはどのような企業のことを指すのかを知っておきましょう。Ventureという言葉自体の意味は、「冒険的な企て」。ベンチャー企業は大企業などが新しい技術や事業を開発して、新たに事業として立ち上げた中小企業という意味です。
本来のベンチャー企業の定義としては、スタートアップ企業に近しい意味合いを持っているのが特徴です。ちなみにスタートアップはインターネット関連の事業を行い、ベンチャーよりも急速に成長を遂げている事業を指す場合が多いので、混同しないように注意しましょう。
最近では、この本来の意味ではなく、「新しく起業した中小企業全般」を指してベンチャー企業という場合もあるので、どちらの意味で使われているのかはよく確認しておくべきです。この記事では最近多く使われている、新しく起業した中小企業全般という意味でベンチャー企業を定義づけ、ご説明していきます。
■ベンチャー企業の特徴
ベンチャー企業に転職する前に、まずはベンチャー企業の特徴をよく知っておきましょう。ベンチャー企業は下記4点のような特徴を持っていることが多いです。
・少人数
大手企業に比べて圧倒的に人数が少なく、数名から数十名程度のこともあれば、100名前後の人数を抱えた急成長中のベンチャー企業もあります。いずれにしても数千~数万人を抱えている大手企業に比べて、少人数制であることは変わりありません。これまで大人数で仕事をしてきた人はその違いに驚くことも多いでしょう。
・成果主義
大手企業のように、ベンチャー企業にはキャッシュがたくさんあるわけではありません。そのため、少人数でもしっかり成果を上げていかなくては倒産の危機に追い込まれることもあります。
そういった背景から、成果を上げた人を称賛して役職を与えていくという考えを持っているベンチャー企業が多い傾向にあります。その企業の風土にもよりますが、年齢や社歴などに関係なく、成果を上げたものがどんどん上に上がっていくという傾向が強いのもベンチャー企業の特徴です。
・経営者と距離が近い
少人数だからこそ、経営者との距離が物理的にも心理的にも近いという特徴もあります。だからこそ、経営者が考えていることが社員に浸透しやすいともいえるでしょう。仕事の話はもちろん、雑談・ランチ・飲み会などでコミュニケーションをとることも珍しくないため、会社との一体感を味わいやすいという点も大きな特徴です。
・圧倒的なスピード感
経営者と近いこと、そして少人数のため稟議などがなく、自分自身の判断あるいは~数人の確認が取れればGOできるというスピード感があるのも特徴です。大手企業であれば、◯万円以上の決済は必ず稟議書を書いて提出するなどのルールがありますが、ベンチャー企業の場合は、権限移譲をしていく傾向にあるため、個人が決済できる単位も大きく個人で決済できない場合も、すぐに上長あるいは経営者に確認が取れます。
大手企業にはないスピード感で仕事ができる、小回りが利くという点がクライアントに評価されるポイントでもありますから、その特徴を意識しているベンチャー企業も多いでしょう。
■ベンチャー企業への転職で気をつけるべきこと
次に大手企業からベンチャー企業に転職する際、気をつけるべきポイントをご紹介します。大手企業の常識はベンチャー企業にとって非常識といえる場面も多くありますから、「おそらくこうだろう」という憶測でなく事実確認しておくことをおすすめします。
・将来性
まずは、将来性についてです。大手企業の場合は事業の安定性があり、資金も潤沢にあるため、そう簡単に倒産することはありません。しかし、創業して間もないベンチャーの場合は資金も潤沢に抱えていないため、なんらかの理由で仕事がストップした・売上が下がってしまった・従業員が辞めて仕事が回らなくなってしまったなどの状況が少し続くと倒産の危機を迎える企業もあります。
もちろん、その企業ごとによってどの程度の資金を保有しているのかは異なるため、一概に言えませんが、大手企業よりも早いペースで倒産に追い込まれる可能性が高いのは事実です。そのため、従業員の状況や売上の推移、競合の存在など、将来性に不安が出てくるような内部・外部要因がないかどうかを確認しておくことが重要になってきます。
きちんと情報を仕入れ、客観的な立場で将来性に安心が持てるかどうか、そして自分が勤続すると想定している年数までもってくれるかは確認しておくべきでしょう。
・文化の見極め
ベンチャー企業と呼ばれる中にも、ベンチャーマインドがある大企業か、本当のベンチャー(冒険的な企て)文化を持った中小企業なのかによっても大きく異なります。ベンチャーマインドがある大企業の場合は、チャレンジを応援してくれるけれど、制度やルールは整っていて型破りなことは嫌う傾向にあります。
逆に本来のベンチャー文化を持っている中小企業の場合は、型破りなチャレンジも応援する、とりあえずやってみるという考えを持っていて、ルールは決まっていないという傾向にあります。
企業によって度合いの濃淡があるため、「ベンチャーマインドがある大企業ならこうだろう」とは具体的には言えませんが、どの度合いのチャレンジをどのような制度で応援しているのかを確認しておくと、自分に合う文化かどうかは判断がつくはずです。
・付帯業務の多さ
ベンチャー企業は少人数で運営されていますから、大手企業ならある部署がないことも多いです。人数にもよりますが、数十名程度になってやっと人事(主に採用)や総務担当などが必要になってくるレベルであるため、その規模程度だと各自が自主的にその業務を兼務で行っているという場合も十分考えられます。
そのため、本業以外の付帯業務として今不足している部署の仕事を並行して行う必要が出てくるのです。本業だけで8時間の労働時間を超えてしまうような分量の仕事があるため、付帯業務を行うと確実に残業になるということもあるでしょう。
・設備、労働環境の違いの事前把握
総務や人事などのバックオフィス系部署は後回しになる傾向があるベンチャー企業ですから、会社設備に関しても整っていないケースが多いです。また、企業によっては仕事量が膨大で残業時間が想定よりも多いということもあるでしょう。さらに残業◯◯時間分を含んだ給与になっていることなどを理由に、残業代をしっかり支払ってくれない場合もあります。
残業の実態や残業代支払いの実態も、よく確認しておく必要があるでしょう。年収に関わってくる部分となりますので、注意が必要です。
・年収や職務内容の不安定さ
少人数で行っているため、どうしても昇格・降格、業績の不安定さ、異動などの頻度が高く不安定です。そのため、降格に伴って、あるいは賞与の支払いがなくなって希望していた年収に届かない、希望ではない部署に異動になって、本来やりたかった仕事ができないなどの不安定さを感じることも多いです。
異動は大手企業でもありますが、入社してすぐに異動など大手企業ではあまりない短期間での異動を命じられるケースもあるため、確実にその仕事ができるという保障がないことは理解しておきましょう。また、降格の頻度や業績によってどの程度下がれば賞与が出ないのかなどの基準も確認しておくと、ある程度の予測ができるため安心です。
・離職率の高さ
ベンチャー企業の場合、少人数で行っているため1人でも退職してしまうとその分の仕事を割り振ることになり、負担が倍増します。業務のしわ寄せによって退職が続くなど離職率が高まりやすい構造になっていないかもチェックすべきポイントです。
離職の危険性までは入社前に判断できませんが、そういった状況になることを想定して業務のバランスを考えておくことも重要になってくるでしょう。
・ワンマン経営
ベンチャー企業に限らず、中小企業は良くも悪くもワンマン経営であることが多いです。そのため、経営者との相性がいいかどうか、考え方に共感できるかどうかで大きく働きやすさが変わってきます。ワンマン経営の良さとしては一体感が出やすいという点ですが、悪い点としては独断ですべてを進めるため、社員がまとまらない・離職するなどの問題が出てくることもあります。
良い点ばかりを見るのではなく、悪い点も含めて検討し、それでもその企業に入りたいという気持ちを持てるようであれば、ベンチャー企業に転職するという冷静さを持っておくと、入社した後にモチベーションが大きく下がるなどの問題が起こりにくくなるでしょう。
■まとめ
ベンチャー企業に転職する前に知っておきたい、気をつけるべきポイントをまとめてご紹介しました。大手企業の常識を持ったままベンチャー企業に転職をしてしまうと、「こんなことから自分がやらなければならないの?」と思ってしまうことも多いはず。
ベンチャー企業側からしてみると、「大手企業とは違うんだから当たり前」という感覚なので、特性を理解して入社しないとお互いに不幸な結果を生むことになります。そうならないためにも懸念点をしっかり把握し、自分に合うかどうかを判断した上で転職を決意するようにしてみてください。