正社員の採用時には、多くの企業で設けられていることも多い試用期間。一般的には3ヶ月~6ヶ月の範囲などが多く、求人広告に書かれているのを目にしたことのある人も多いでしょう。試用期間は満了後に大きな問題がなければ、基本的に本採用をすることが決まっている採用方法です。
そのため、試用期間を延長されるなどのケースがあると、入社した立場としては驚くはず。また、「一方的な延長は違法ではないのか?」という疑問も浮かんでくるでしょう。そこでこの記事では、そんな場合の違法性や対処法をまとめてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
■一定の理由がなければ一方的に延長はNG
そもそもお互いに試用期間を確認してスタートしているわけですから、延長する場合にも双方の合意が必要。一方的に期間延長するのはNGとされています。試用期間中は給与が本採用よりも低い・本採用時と待遇が違う・解雇の条件も本採用に比べてゆるいなどの違いがあるのはご存じでしょうか。試用期間だけに限って企業側にとって有利と思えるような条件も認められているのです。
このような状態であるため、企業側が簡単に延長可能な状態になってしまうと労働者に不利な状態を招くことにもなりかねません。そのため、一方的に延長をすることはNGとされているのです。
また、試用期間中に不採用を告げられるということもあるかもしれませんが、試用期間中でも労働契約は成立しています。つまり、試用期間中であってもその会社の従業員であることには変わりないのです。本採用のときよりも条件は厳しくありませんが、試用期間を経て不採用とする場合、法的には「解雇」という扱いになります。
そのため、企業側から不採用を告げられた場合は解雇の理由を確認することが重要です。正式に採用しない=解雇をするには、企業側に対して下記のような条件があります。
・解約権留保の趣旨に基づいて、合理的な理由があること。社会通念上解雇も仕方がないと判断される場合のみ認める
・試用期間を満了した労働者は、不適格と認められる者以外は原則正社員として登用すること
・試用期間でも14日を超えて勤務している労働者を解雇する場合は30日前に解雇予告を行わなければならない
簡単にいえば、社会通念上不適格と思われるような人でなければ、解雇されるいわれはないということです。これを頭に置いた上で、試用期間の延長について考えていきましょう。
■試用期間の延長自体は違法ではない
しかし、試用期間の延長という行為自体に法的な問題があるわけではありません。一定の理由があれば、延長を認めるケースもあります。これは専門家の間でも意見が分かれるポイントとなりますので、どのラインから延長がNGとされるのかは一概に言えません。しかし、下記の条件を満たしていれば延長が認められます。
・合理的な理由があるか、社会通念上相当な内容である
試用期間中に解雇通告をされる場合は、例えば出勤率が9割を切っている・無断欠勤が3回以上ある・業務違反・規律違反が注意しても直らない・経歴詐称・協調性がなく社員に不適格と思われるなどの理由があります。
また、通常は本採用を断るような理由があるものの、解雇する前の措置として試用期間を延長する場合もこれに当てはまります。つまり、不適格と判断したけれども延長して改善が見られるかどうか、猶予期間を与える意味での延長をするという対応の場合は延長が認められるケースもあるのです。
このように内定時に知らなかった情報が後で発覚した場合、著しく勤務態度が悪く、注意しても直らない場合などは試用期間の延長も認められることがわかります。
・就業規則で延長の可能性に触れられている
入社する際の就業規則に、「この条件に当てはまった場合は試用期間の延長もあります」と触れられており、実際に自分がその条件に当てはまっているようであれば、試用期間の延長はありえます。試用期間がある場合は特に就業規則などをしっかり読み込み、このようなトラブルが起きないように働いていきましょう。
・延長について事前通知や合意がある
試用期間満了あるいは終了後に延長を告げることは、認められていません。そのため、試用期間中に延長を告げられ、合意をしているという状態でなければ、試用期間の満了を迎えた時点で正社員として登用されることが妥当とされています。
試用期間の延長をいつ告知されたのかによっても対応が変わってきますので、よく確認してみてください。
■試用期間を一方的に延長された場合の対処法
では試用期間中に一方的に試用期間の延長を告げられたとき、どう対処すればいいのかをご説明していきましょう。
・本当に一方的なのかをまずは確認しよう
労働契約書や就業規則を確認し、試用期間は何ヶ月と書いてあるかを確認。また、延長の可能性や理由についても触れられているかを確認しましょう。あなたが一方的と思っていたとしても、就業規則には書いてあったというケースも考えられます。
そもそも試用期間が延長をすると1年を超える場合は、民法90条の「公序良俗」でも試用期間が1年以内が妥当とされているため、民法に違反する可能性もあります。
そこで事実確認をし、書面で試用期間の延長について触れられているようであればどのような理由で延長となるのかを確認し、自分が該当するような行動をしていないか、振り返ってみましょう。自分自身で判断が難しい場合は、労働基準監督署・社会保険労務士・弁護士などに相談し、状況を客観的に判断してもらってください。
・延長の理由を確認
事実を見ても一方的な延長であることが確認できたら、延長をする理由について確認をしていきましょう。もしかしたら企業側に労働法の知識がなく、企業が簡単に延長ができると考えているのかもしれません。
延長の理由が社会通念上相当と思えない場合、自分が該当していないと思われる場合は、専門家を交えて話し合いを行う方がいいでしょう。あまりに不当で裁判を起こした方がいいと専門家に言われた場合は、裁判についても検討すべきかもしれません。
・裁判か延長を受け入れるか、転職かを判断
事実を確認したら延長については書面で触れていたため、自分の確認不足。企業側から試用期間の延長を申し出てきた場合は、「本来なら解雇だけれど、もう少し様子を見よう」という救済措置である場合も十分考えられます。すぐに解雇という判断ではなかったことに感謝し、延長を受け入れて業務態度の改善を図って本採用してもらえるように行動をするべきでしょう。
仮に不当だと思われるケースでも、話し合いで解決が見えない場合は裁判を起こすことを勧められることもあるかもしれません。しかし、裁判には時間もお金もかかるため、仮に勝訴したとしても、「時間やお金をかけてこれっぽっちか」という感覚に陥ることも十分考えられます。何が得られるのかを考えてから裁判を起こすかどうかを判断しましょう。
裁判の道を選ばないと考えるなら、次の転職先を探して新たなキャリアを始める方が自分自身にとってはプラスになるかもしれません。どちらが自分のキャリアや人生にとって良い道となるのかを考え、専門家にも相談して判断をするようにしてください。
■まとめ
まさか試用期間の延長があるとは思わずに働いてきた方にとっては驚き・戸惑いも多い出来事ですが、大切なのは事実や理由をしっかり確認し、どの道を選ぶのが自分にとって良い道となるのかを判断することです。
簡単な判断ではありませんから、労働基準監督署・社会保険労務士・弁護士などの専門家に相談し、アドバイスをもらいながら判断を下すようにしてみてください。この出来事をきっかけに自分のキャリアを前向きに捉え、良いキャリアを創出できるようぜひ参考にしてみてください。